「何となく分かっている感じみたいですよ」
看護師が言った。
「娘さんが来てますよ」
通常時でさえ腫れぼったい目をうっすら開けて、親父殿は左目でアタシを見た。
そこには親父の"意志"が在った。
口をもごもごさせる。
何か言いたかったのか、それとも筋肉の勝手な仕業かは分からない。
病院の前の横断歩道が青になるのを待っていると、涙がこみ上げた。
紛れもなく、"生"への喜びだった。
「そうゆうふうに出来ている」
そう言ってしまえばそれまでだけど、親父が手術をしてもらっているのを待っていた時から、ずっと考えていた。
「なぜ人は"生"を望むのか」
親父と意識を交わせたことに感動した反面、結局は、周りの人間のエゴなんじゃないか、とも思う。
親父が今、あるいはこれから、どんな風に思うか、アタシたちには分からない。
たぶん、アタシは怖い。
「なんで助けた」
と、責められる時が来るのが。
だから、エゴ以外の理由を探してる。